甲斐犬オヤジの独り言5



シャイ


今回は犬の臆病・シャイについての一考。よく人から「甲斐犬はシャイな犬が多い」と聞かされる。私もそれは否定しない。確かに特に牝犬は顕著だろう。しかし、飼い主が納得し良き家庭犬として認めていれば、他人がとやかく言うことはないのだろうが、私が一言言わせて貰いたいのは、繁殖者が平気でシャイな牝を台牝 として使っていることだ。勿論シャイにも程度、許容の範疇があろう。客人が来ても帰るまで無駄吠えをしたり、引き運動に連れだせば尻尾を下げてキョロキョロしたりする犬を平気で台牝として使う者の気がしれないということだ。しかもベテランと言われる人に多いのも実に困ったことだ。それは展覧会を追うあまり、容姿第一 主義で本質を置き去りにしているためだ。猟師曰く「展覧会で何が分かるのだ。犬の本質など分かる訳がない。」となる。それは怏々として認めるが、猟性だけを求める時代でもないことも又事実だ。山梨で甲斐犬を買った人が私に「小林さん、甲斐犬は展覧会なんか出す必要ないんですよね」「展覧会に出す甲斐犬は本物じゃない んですよね」とのたまう。ウ〜ン

実際そのお宅の甲斐犬達を見学して更にウ〜〜ン。ブス、ブオトコの品評会、中に紛れもない白い紀州犬が一頭、その御人曰く「これは珍しい白い甲斐犬です」とのたまう。ハーと開いた口が塞がらない状態。やや箱口のつり目、正に紀州犬なのである。
つまり、山梨の繁殖者が大きさを取るためか、猟性を取るためかの目的で白い紀州犬を交配したのだ。そしてその繁殖者が、その御人に「展覧会で甲斐犬の本質なんて分かりはしない」「展覧会に出す必要はない」との御高説をたれ流した張本人なのだ。
そのお宅には20頭もの甲斐犬達がいたのであるが、展覧会に出せないレベルの甲斐犬だから、出す必要がない(出さないでくれ)と初めから予防線を張っていたのだ。

その御人は今でもその繁殖者の言を頑なに信じているのである。余談ではあるが、その御人一度に4頭の子犬を購入し100万円以上出したとか。又ウ〜〜ン。因みに犬の評価だが、殆どの犬が前肢わい曲、後肢X脚、歩様鈍重。しかし資産家の御人に大事に飼われる甲斐犬達は幸せそうに見えたが、何とも複雑な心境であった。 その後のお付き合いは一切ない。何せ甲斐犬に対する方向性が違いすぎる。家庭犬としての飼い主としては模範的な人だと言うことになるのであろう。余談が長くなったが、甲斐犬のシャイ、本質に戻すと、「姿芸両全」容姿もよく猟性もあり、と言うのが理想ということだろう。

人で言うところ容姿端麗、頭脳明晰、才色兼備とい うところか。当然そこにはシャイは当てはまらない。しかし一つの事実として、猟には牡犬よりシャイな牝犬の方が向いていると言われている。ならばシャイな牝でもいいじゃん、とはならないと私は考える。それは、長年猟をやってきて多少シャイな犬でもその系統を追って、研究した人であれば十分説得力をもつだろうが、上記 のような繁殖者が駄犬を売らんがための口実にさせてはならないと思うのである。ここで少し長いが、イヌ学者の大野淳一氏の論文を引用させて頂く(日保の日本犬への寄稿文から)


アメリカのコーネル大学形態学実験所で、約300頭のイヌの繁殖テストを実施したところ、約25%が遺伝的なシャイであったとの報告がある。この数値はけっして異常ではない。ソーンの「イヌのシャイの遺伝」という論文によると、ゲインズ・イヌ研究所の実験グループが178頭を調査したところ、そのうちの82頭 すなわち46%がシャイであったという。そして驚いたことに、その82頭のうちの43頭(52%)がシャイで人を咬むバセット・ハウンドの雌「ポーラ」と人なつこくて気質が正常なサルキー、ダックスフント、ジャーマン・シェパード、ブルドッグなどの雄との間に生まれた子孫であったという。さらに「ポーラ」の子孫を追 跡調査をしたところ、59頭のうち43頭(73%)がシャイまたは人に敵意を持つものばかりであったそうである。以上の事実により、われわれは正常な精神状態の雄犬をもってしても、シャイな雌犬の子孫を遺伝的に補償し得ないことと、その発現ハイ・アベレージに注目する必要があるだろう。従って、シャイな雌犬による繁 殖は優性に遺伝するため、理論上好ましくないことはいうまでもないが、強度の雌イヌは繁殖線上から抹殺すべきである。また、中程度のシャイも決して適格とはいえないし、軽度のシャイのイヌの繁殖はよほど慎重でなければならない。

以上論文の一部であるが、ポーラという牝犬の追跡調査では、正常な牡犬との子孫の73パーセントがシャイとは物凄い確率だ。勿論これらがそく甲斐犬に当てはまるかの疑問の予知はあるにせよ、当たらずも遠からずであろう。そして、甲斐犬の本場である山梨の繁殖者が平気でシャイな牝を交配に使うという事実と、多く の繁殖者が牡犬さえよければ牝犬は何でもいいと思考している事実が現実にあると言うことだ。そこにもう一つの問題が出てくる。インブリードや系統繁殖だ。馬の場合は犬以上の血統に拘る。サラブレットなど血統以外何も意味しない。日保の大臣賞を取った犬達もその系統にこだわるだろう。至極当然なことだが、その貴重な血 を貰って自分なりの系統を作っていくにはそうは簡単にはいかない。

私はいい種牡をもつより、良い台牝を持つ人が最後は勝利すると思っている。そして牝犬の癖を見抜くことだ。3度子犬を取ったら、その牝犬の癖が分かる。交配した牡犬に似た子をどれだけ出すか、牝犬に似た子と牡に似た子を出すかであり、どちらともいえな い子を3度も出す牝は、その牝イヌが展覧会上位の犬であっても台牝としては使わないことだ。1〜2頭の犬を家族の一員で一生大事に飼うという人はブリーダーには向かない。ブリーダー、繁殖者とはプロの犬屋のことだ。まあセミプロとの言葉もあるが。ダメだと判断した牝犬を切れるかどうかだ。なにも煮て食おうというので はない。欲しい人にやればいいのだ。但、シャイな犬は人に馴れないので貰い手をさがすのが大変になる。だから私はシャイな牝は仔犬のうちに安く出すか、ただで差し上げる。私は今まで何十頭も成犬クラスの犬を人に譲ってきた。しかし、譲渡先から苦情が来たことはない。知り合いの犬を売って苦情が来たことは2度ある。そ の原因はシャイ。そういう所とは今後の付き合いはないのは当然のこと。なぜか、その台牝を切れないからだ。甲斐犬で五対満足なら血統も関係ないというポチが好きな客のニーズは応えられるだろうが、それなら自分で売れ。論文の話からすると甲斐犬も相当数のシャイの因子が有るとみていいだろう。そして繁殖に使う牝犬は、 せいぜいややシャイが限度、それを守ることに他ならない。牡犬のシャイは論外、まあ容姿に優れ、完全歯で毛質抜群、尾の表現も素晴らしい犬で、なお且つ系統の研究のためであれば許されると思うが、売らんがための交配はするべきではない。

人も犬も牡はつぶしがきかねェなー、、、

 

 2009年6月 代表 小林

 

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