甲斐犬オヤジの独り言13



「里守り犬」一考 


5月18日産経新聞に「里守り犬」が村を救う という長辻論説委員の記事を読んでの一考である。


都市に暮らしているとわからないが、農山村の被害は深刻だ。集落崩壊にもつながり得るという。鳥獣によるこの10年ほどの農作物の全 国被害は、毎年200億円前後に達している。シカ、イノシシ、サルによる被害が大きい。農家や自治体は、畑の周囲に防護柵を張り巡らせて侵入を防いできたが、サルは木に登って乗 り越えてやってくる。そこで国策として犬に白羽の矢が立った。動物愛護法も一部が改正されて、野生鳥獣による被害防止のために働くときには、訓 練された犬の放し飼いが認められるようになったのだ。

こうした犬たちの当初の名称は「追っ払い犬」だったが、とくにサルに対して有用なので「モンキードッグ」と呼ばれることが多くなって いる。モンキードッグの導入には、国から自治体への交付金が用意されている。

中略

東京農業大学の増田宏司講師は動物行動学者で、犬の行動にも詳しい。山梨県内でのモンキードッグの訓練基準やサルに対する導入効果など を研究している。

訓練には地元の農家の人達が自分の飼い犬と一緒に参加する。洋犬もいるが、山梨県なので日本犬の甲斐犬が多い。
増田さんは面白いことに気がついた。1980年代に行われた米国での研究によると、日本犬の知能は洋犬に比べて劣るとさ れていたのだが、実はそっけなく見える反応の中に優れた資質を秘めていたのだ。「自分で考え、黙々と迅速に行動します」
増田さんは、もう一つのことにも気がついた。地域での訓練場所を毎回変えることによる効果だ。サルの目には、犬と人の集団がいろんな 場所に現れるようになったと映る。これがサルにとっては脅威であり、村里進出への抑止力として働くそうである。
これ等の犬を増田さんたちは「里守り犬」(さともりいぬ)と呼ぶ。何ともよい響きではないか。人と犬との好ましい関係がここにある。

(産経の記事より)

 

以上が記事の紹介であるが、ここで注目するのは、鳥獣被害が毎年200億円前後に達してることと、増田さんという動物学者が、洋 犬より知能が劣るといわれている日本犬が、優れた資質を持ち、「自分で考え、もくもくと迅速に行動する」と謂うことに気がついたとい う点だろう。

甲犬を飼育する者から謂えば、至極当然なことなのだが、動物学者といえども今まで日本犬を飼った経験がないとの想像はつく。「自分で 考え、もくもくと迅速に行動する」のが日本犬であり、甲斐犬なのだ。

つまりは、動物学者が今気付いたことを、甲斐犬飼育者は、昭和初期から知っていたということに他ならない。その点では学者より甲斐犬 飼育者の方が上なのである。これは戦後の日本人の多くが、日本の歴史、文化、伝統を知らないことと共通しているのではないかと思えて ならない。

農作物の全国被害額が、200億円とはこれまた凄い数字である。過疎化が進み、人口の減少に歯止めが利かないのが第一の原因だろう が、その結果としての里山の荒廃が、動物との住み分け、共生に狂いが生じたことが第二の原因となつたのだ。

ここ北杜市武川町でも、いたるところに電気柵が目に付く。主にイノシシやシカであろうが、ここでもサルには電気柵は通用しない。木 や電柱から飛び移るからだ。それによく見ると、予算の関係だろうが、ところどころで電柵が途切れているではないか。これで は意味がない。

シカがしかとで道路を走る状態なのだが、生産者は喜んでは居られないだろう。個人の家でも庭や畑の周りは電気柵で防御している。シ カには有効だろうがやはり、サルには無意味のようだ。やはり、里守り犬、モンキードッグとしての甲斐犬の出番か。

既存の猟からすれば、サルは獲物、ターゲットではない。ましてや、猟師が自分の犬にサルを追わせる訓練などナンセンスである。こ れは私も実感として体験していることだが、サルを追う癖がついた犬は、折角の獲物がいても無視してサルを追うからである。木 に登ったり、下りたりと犬に見えるから面白いのである。

ある夕刻、イノシシが犬の運動中前方を横切ったのを犬も確認して、追いかけるポーズを取った時に、サルの群れが手前に現れ、リー ドを放したら、イノシシを追う途中にサルの群れに方向展開して、サルを追いだした経験があるからだ。それからは、1歳位までの犬には良い運動になるので、サルがいればリードを放して追わせるが、1歳以上の犬には、イノシシかシカ以外 は追わせないようにしている。但し、牡の立派な牙の持ち主はリードは放さないことはいうまでもない。

しかしサルを深追いし過ぎると、反逆をくいサルに殺される。だからある程度サルを追わせれば、口笛や大声で犬を呼び寄せなければなら ない。そこで、呼びの訓練が必要になるのである。猟欲の有る犬や呼びの利かない犬には、サルを追わせてはならないのであ る。つまりこの呼びが、里守り犬には必須の条件となる。

甲斐犬であれば展覧会用の犬でも家庭犬でも、サルがいれば追うのであるが、中にはビビりで追わない犬もいる。日本犬としての資質に欠 けているのだが、都会暮らしでは仕方がないが、、資質があれば都会暮らしでも行くはずなのだ。

既存の猟とは違う里守り犬の大活躍により、農産物の被害が確実に減少することと思う。そして甲斐犬の新たな活躍に期待が持てる絶好の 機会でもあろう。里守り犬という聞こえの良い響きとともに、甲斐犬が見直される絶好のチャンスでもある。

 

 

ちょっと一服  私が女性で尊敬する一人、長谷川先生の講演です。

 

 

 

 


 


過去ログページに戻る


戻る